『オポジション』政治学者・吉田徹さん 【朝日新聞】

分かり易い!、民主党をはじめとする野党は確りしないと。

それ以上に私達国民は「空気」を読んでばかりいないで、政治に対して一人一人が自分の頭で考えないといけませんね!!

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SEALDsさんの写真

【写真説明】
「勝者と敗者を常に入れ替えなければうまく機能しない。それが二大政党制です」=札幌市、恵原弘太郎撮影

(インタビュー)オポジション 野党を研究する政治学者・吉田徹さん
http://www.asahi.com/articles/DA3S12053398.html

朝日新聞2015年11月6日05時00分

「野党はだらしない」。正直、もう言い飽きた。この決まり文句の先へ行かなければ「1強多弱」が続き、政治のダイナミズムは損なわれる。しかし、さて、どうすれば。もんもんとしていたらドアをたたく人あり。政治学者の吉田徹さん。英語で言い換えると見方が変わるかも、と言う。「野党」じゃなくて「オポジション」と。

――自民党「1強」という政治状況の中、野党のだらしなさばかりが目につきます。

「野党がだらしないという決まり文句は、『野党』という言葉のせいもあるかもしれません」

――どういうことですか。

「そもそも『野党』という言葉は、明治期に一般的になった『在野党』から派生したもので、権力にあずかっているか否かという『引き算』によって定義されている。日本では最初からマイナスイメージがついて回ります」
「英語で野党は『オポジション』、原義は『対抗(勢力)』。能動的で、むしろ積極的な意味を持っています。英国の野党は『陛下の野党』と呼ばれ、有形無形の支援制度が優先的に割り当てられています。野党にげたを履かせて、与党との健全な競争を促さなければならない、なぜなら野党は、民主政治の維持と発展のために不可欠だからという思想が、広く社会に受け入れられているためです。翻って日本は、英国流の二大政党制を『輸入』しましたが、その制度を支える思想は根付かないまま。結果的にげたを履いているのは、長く政権を担ってきた『自然な与党』たる自民党です」

――ただ、野党がいくら反対しても法案は通る。対案も出さず、野党は国会で騒ぐだけという冷ややかな見方も広がっています。

「野党の使命は、何よりも与党権力をチェックすることです。対案はその手段のひとつに過ぎず、絶対視すべきではありません」
「野党を通じて、多様な民意が政治の場にきちんと表現されることで、少数者の権利が守られたり、不満が『ガス抜き』されたりして、社会は安定する。逆に、与党が反対勢力からも幅広い合意を取り付けようと努めなければ、社会は不安定になります。与党は政策を遂行する権利を持ち、野党は耳を傾けてもらえる権利をもつ。民主政治がそのようなバランスの上に成り立っていることを、まずは理解する必要があります」
――野党を過大評価している印象を受けますが。
「いえ、民主政治にはオポジションが重要だと言っているのであって、それが野党である必然性は必ずしもない。例えば、主要政党すべてが閣僚を出しているスイスでは、国民投票がオポジションとして機能するし、米国では司法がそうです。日本でもかつては自民党の派閥や、衆参の『ねじれ』などがオポジションの役割を果たしてきた。ところが今の安倍政権下では、そうした『オポジション力』が非常に弱まっています」
「集団的自衛権の行使容認のために内閣法制局長官をかえる。『中立・公正』の名のもとにメディアを威圧する。権力にとって最強のオポジションであるはずの憲法をも軽視する。政治がある意味『ブラック企業』化しています」
「議論をしている暇などないから『右向け右』で全員が右を向く。それが最も合理的なのだ、と。政治や企業のトップだけでなく、大学を含めて、社会全体がそういう雰囲気になっている。今の政治もその表れです」
■     ■
――「決められない政治」が批判されたのはつい数年前。オポジションを排した政治は、民意の要求であるとも言えませんか。

「短期的にはオポジションを排した方が『生産性』は上がるようにみえる。だけど長期的にみれば、持続可能性は減ります。ブラック企業がそうでしょう。民主主義は手間がかかりますが、だからこそ続いてきたのです」
「組織や政策が行き詰まった時、全員が右を向いていたら方向転換できません。右を向かない人間を抱えて多様性を確保し、違う道を進めるようにしておくほうが集団は生き残れる。野党は、既存制度がダウンした時のバックアップシステムのようなものです」

――だからこそ野党は、与党との対立軸を描きだし、政策を競わねばならないということですね。

「二大政党制を、与党と野党どちらがダンスがうまいかを競っているかのようなイメージで捉えるのは、間違いです。グローバル化と社会のフラット化が進んだこの時代にあっては、明確な対立軸を描き、世界観を競うような政党政治はもはや成り立ちません」
「与党と野党はペアダンスを踊っているようなもの。相手がこうステップを踏んだらこっちはこう、相手が賛成なら反対、反対なら賛成と。2009年と12年の政権交代はいずれも、政権与党が信任されなかったから。有権者が民主党や自民党に政権を取らせたいと積極的に選択した結果ではありません。身もふたもない言い方をすれば、小選挙区制のもとでの政権交代は、与党の失墜があって起こるものなのです」

――敵失なくば交代なし。確かに身もふたもないですね。しかし、安保法制で世論の反発を招いた安倍内閣の支持率はさほど下がっていません。なぜでしょう。

「有権者の関心は、景気と社会保障に集中しています。そこでミスをおかさなければ、『致命傷』にはなりにくい。安倍内閣はそれをよくわかっています」
「タイムマネジメントと言葉づかいも、とても巧みです。安保法制のほとぼりをさますため、秋の臨時国会を開かない。取り得る最善の策です。そして『アベノミクス』『積極的平和主義』『一億総活躍社会』。言葉の意味はあいまいだけれども、とにかくポジティブ。無党派層からすると、それを批判する野党は、揚げ足取りをしているようにしか見えません。ノリの悪いやつだと、ね」

――景気よく行こうぜ、と。

「だからこそ、言わせっぱなしにしないために、国会審議が野党にとっては重要です。具体的な事例で相手を問いただし、答弁の矛盾をつき、言葉づかいの巧みさで押し切られがちな点をひとつずつピンで留めていく。誰が『正しい』かを決めるのが選挙で、何が『正しい』かを決めるのは国会です。決定と熟議。この両輪がきっちり回ってこその民主主義です」
■     ■
――今は討議の車輪の回りが非常に悪い。そのことへの不満が、人々をデモへと押し出したと。

「デモというオポジションが当たり前になったのは歓迎すべきことです。ただ、野党がしっかり民意を転換できていれば、本来、主権者が時間と労力をかけてデモをやる必要はないはずです」
「代表民主制はいわば民意の『風景画』を描くようなもの。画家が色を加えたり遠近感を演出したりして風景を再現するがごとく、民意を政治の場で表現するための翻訳力、意訳力こそが政党の底力です。民主党は、それを十分に理解していない。民意をそのまま代表するのでも、自分たちが正しいと思う政策を追求するだけでもいけない。選挙に勝った我々こそが民意とばかりに振る舞う自民党に対抗する意味でも、民主党は民意とコミュニケーションし、意訳する力をこそ磨くべきです」

――デモでは「野党は共闘!」の声もあがっています。

「国会の外から吹く『追い風』に、野党が帆をどう張れるのかが問われています。非自民ブロックが分裂している限り政権交代はないというのは過去2回の選挙の教訓です。『国民連合政府』の構想はその学習の結果のひとつでしょう。政治学者の阿部斉(1933~2004)が言ったように、政治とは『ありあわせの材料』で『まにあわせの解決』をすることです。どのような方策でも不満は残るでしょう。しかし、野党各党がそれぞれ生き残るための合理的選択をした結果、票を食い合うという不合理を生んでいる。この『合成の誤謬(ごびゅう)』を何とか乗り越えないと、自民党という『自然な与党』が君臨し続けます」

■     ■
――「政権交代可能な二大政党制」を目指した政治制度改革の弊害は、予想以上に大きかった。見直すべきではないですか。

「選択肢としてはあり得ますが、こっちの方が便利だとか新しいとか、百円ショップで買い物をするように制度をとっかえひっかえしていても、この国の民主主義はいつまでも成熟しません。政治とは結婚生活のようなもの。関わり、育て、折り合いをつける。その忍耐力がなければ使える制度も使えなくなります」

――だらしない野党も、忍耐強く育ててしっかりさせろと。

「野党は民意の尖兵(せんぺい)隊のようなもの。野党がだらしなく見えるのは、もしかしたら私たちが、自身の民意のありようを了解していないからかもしれません。どんな社会に生きたいか。どんな意思を政治に反映させたいか。それを考え、実現させるために、与党も野党もツールとして使いこなすのが主権者の使命です。ないものねだりも、観客でいることも許されない。それが民主主義ですから」
(聞き手 論説委員・高橋純子)


よしだとおる 75年生まれ。北海道大学教授。専門は欧州比較政治。著書に「感情の政治学」「ポピュリズムを考える」、編著に「野党とは何か」など。

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